大きなアパートの、小さな部屋に、乾いたチャイムが鳴った。

 

足音を忍ばせて、ドアスコープを覗く。

 

小さな部屋の、冷たいドアの外に、

 

知らない男と知らない女が立っている。

 

並んで、コート姿で並んで、立っている。

 

わたしを迎えに来た。

 

私は急いで、忍び足で、ベッドに飛び込む。

 

早く居なくなりますように早く居なくなりますようにはやくいなくなりますように早く

 

誰にも聞こえない声で、お祈りをする。

 

誰にも聞こえない声は、誰にも聞こえないから、神様にも届かなかった。

 

知らない男と知らない女がわたしを連れて行くのを、

 

私は窓の外から、見守ることしかできなかった。

 

 

 

 

ーendー

 

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