西の海へ向かう道で

 

たくさんのトラックとすれ違ったよ

 

大きなトラックさ

 

屋根のない二台の積荷は

 

一つ残らず裸の死体

 

パパとはぐれた

 

息子を庇った

 

手足の足りない

 

ママを残した

 

名前を落として見つけられない

 

全部まとめて裸の死体

 

 

海にはなんにも無かった

 

 

西の海から帰る道で

 

追い越したトラックを運転していたのは

 

悲しい亡霊さ

 

東ともなく行き急ぐけれど

 

虚ろな瞳で光を集める

 

娘とはぐれた父親

 

母に庇われた年老いた息子

 

器用すぎた大人や子供

 

生まれてしまった小さな彼女

 

 

忘れてもいい名前をぶら下げた

 

どれもこれも悲しい亡霊

 

 

海にはなんにも無かった

 

街はもう当たり前だった

 

 

追いかけなくていいよ

 

待たなくていいよ

 

苦しくなんかないから

 

もう少し生きてよ

 

 

海にはなんにも無かった

 

やさしく鳴いてた

 

海にはなんにも無かった

 

しばらく泣いてた

 

” 今 ” には残っていなかった

 

風だけ流れてた

 

亡霊を残して

 

 

 

 

ーendー

 

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