声がする
君が呼んでる声がする
そちらを向いてもきみは居なくて
鏡がこちらを向いている
音がする
きみが泣いてる音がする
そちらの方には誰も居なくて
いつも背中から音がする
助けたいのに見えなくて
またひとり途方に暮れる
干したままのバスタオル
朝露の降りた窓越しに
じっと佇む
越えた季節を数える
そのうちに朝が来て
そのうちに秋が来た
ソメイヨシノだと確信していた枝を
何の木だろうと見上げる
泣き終わった蝉の腹が
冬の色をして言う
もういいかい
ーendー