応接間 御託 こんな夜は 雨の両手に祈る どうか私に触れないでと 人差し指の先でさえ 月を裂くに足りる 枯れちゃいないわ 萎れてもないわ まだ夜に咲ける 私ならここにいて 親指で御託を並べて フィオナに流される 新しい世界にも生まれてしまう 選択制の社会で シャープペンシルくらいの 王になれる ほしいかずちくらいの 王にな... 文月えん
居間 To My Dear 会わなくなったね 電話もしなくなったね その内にきみは お母さんになってた あの頃はいつも一緒にいたね 学校さぼったり 真夜中抜け出したり いつも一緒にいたのにね 会わなくなったけど 電話もしなくなったけど 心はいつも一緒だよ いつかまた きっと近いうちに 愛の音のするその幼子を抱くきみに 会いに行くよ いま... 文月えん
撞球室 アンドロギュノスの否定 どんな女になろうかしら 選択肢は少ないけれど 二者択一ではないのよ なりたい女になれるのよ あんたの望む通りにも どんな女になろうかしら こどもにだってなれるのよ 母親にだって 天使にだって 女神にだって オモチャにだってなれるのよ 涙にだってなれるのよ あんたにだけは なれないけどね ーendー ... 文月えん
応接間 サラサラ カラカラカラ わたしが渇いていく カラカラカラ あなたが冷めていく カランカランカラン ふたりが離れていく サラサラ サラサラ あなたが見えなくなっていく サラサラサラ サヨウナラ ーendー ... 文月えん
応接間 手をつなごう ぶつからないように 歩幅をずらして歩く わたしたちは そうやって すこしずつ 離れていく 寄りかからないために 寄り添えなくなる だから 強がるなら 手をつなごう ーendー ... 文月えん
応接間 風と悪戯 風と共に去ることは 美しいだろう 皮肉も言えないくらい 惨めだろう 「大丈夫」 きみの前で 顔で笑って心で泣いても 「だいじょうぶ」 背を向けて 心から笑って舌を出すよ 風と共に去るように きみを惑わせて 跡形も無く ーendー ... 文月えん
寝室 きみは月より近く明日より遠く 真夜中の交差点 追いかけてしまいそうな どうしようもないお別れに いつもより強く抱きしめたきみの背中 胸に顔をうずめて 「あたしはちっちゃいな」 爪先立ちで長いキス 「あたしはちっちゃいな」 真夜中の交差点 離したくない右手を どうしようもないお別れに いつもよりたくさん振って向けた背中 胸で右手を握って 「あたし... 文月えん
寝室 月下美人 花も恥じらう 乙女十七 煙くゆらせ 氷噛み ソファで呟く 「おしまいね」 華と振る舞い 乙女十八 今夜の寝床は二度目の男 ベッドで呟く 「おしまいね」 黒髪括る鏡台に 抱いた背中を盗みやり いつの間にかの常なれど 眉顰めても 朝は来る 華へ蝶へと 乙女二十二 騙し騙され 陽を眠り 揺れては香る 「あたしは夜に咲... 文月えん