書斎 ニビイロ ゆっくりと歩く。 足音を忍ばせた猫みたいに。 真昼の街を歩いていると 授業を抜け出して堤防や河原へ向かった 学生時代を思い出す。 道行く人は 何かしらの目的地を目指して 猫背でスタスタと 私をすり抜けていく。 いつもの私なら スッと背筋を伸ばし 目的地なんか無いのに 靴音高く人々を追い越して歩く のに、今日は違... 文月えん
書斎 宿なしソバ 帰り道だった。 どこへ行ったのかは覚えていないが、 楽しく過ごした帰り道だった。 自販機でタバコを買った。 再び自転車に乗り、 家路の続きを辿ろうとした視界に、 ホームレスが ソバをすすっている姿が見えた。 路地のくぼみに座り込み、 破れたりほつれたりボロボロの 粗末そうな服を何枚も着込んだ猫背で 不器用そうにソバを... 文月えん
書斎 pickup キセキロク キセキだとか呼ばれるものはきっと、食器棚の上のほうに並べてある来客用の上等なグラスに、ほんの細かい埃が付着しているのを見つけた時のことだ。 そうだと思って注意深くなると、途端にグラスは輝きを増す。 しかし幾ばくかして忘れたような頃になって、ふと客人も無いのにふと曇りを見てしまう。 キセキだとか呼ばれるのはきっと、そん... 文月えん
書斎 AOIRO 《目次》 痴人の愛 夏猫 正しい行い(仮) パスタの行方 ディナーショー ぼくのヒコーキは空を飛ぶ つちふまず 空の死神 通り雨 ハピネス 空の足 サカナ 薬指の契り 波 水嵩の増した夜を泳ぐ 刺繍 誘惑 天使 痴人の愛 愛され方を知ってる猫に どうすればいいか聞いてごらん きっとヤツはこう答えるのさ 曲がっ... 文月えん
書斎 pickup I am きみはどう思うかな? こんな私のこと どう思う? いつもみたいに ご飯食べてるけど 私 こんな人よ 『天使』 きみはどう思っているだろう こんな私のこと いつもみたいに 隣で眠ってるけど 私 こんな人よ 『月下美人』 きみのコトバがわかったら 教えてもらえるかもしれない けれど 私のコトバなんかわからないから... 文月えん
書斎 排泄 ≪目次≫ サワー 笑う 臨界 HAPPY BIRTH BABY アルビノ 優劣 月を落として海に沈めて 悪いコ。 本当に美人な女は往々にして大抵 本当に賢い。 月と虫 五月雨サンダル サバクの夜 胸いっぱいの愛 カフカ 悲しいトモダチ Help TIME IS MANEY 骨なしメインディッシュ 軟禁嬢ーペ... 文月えん