応接間 逃亡 わたしはわたしで きみがきみじゃないなら 明日は昨日より鮮やか あのこが駆けていくよ 時計仕掛けのウサギを チョッキ引っ掛けたウサギを あのこが追いかけていったよ 昨日みたいな 明後日に向かって わたしじゃないきみは あのこを追いかけているんだね ーendー ... 文月えん
寝室 ドライフラワー 一度枯れた花にもう一度水を差すみたいな希望を持って できるだけきみに愛されたいと願ってた まだ幼かったころ 花にも命があることを知ったはずなのに 今はドライフラワーだって愛せる それなら19のわたしと29のきみなら 枯れた花が甘い水で芽吹くと ウソブケタカモシレナイ 小さなわたしはもう22だから ドライフラワー... 文月えん
寝室 うたいたくなった 街路樹が枯れなくなった リンゴが実らなくなった ジッポの火が揺れた 朝焼けが無くなった 月が欠けなくなった 夜が黒くなった 紅茶が冷めなくなった ブラックが甘くなった 喉が渇いた あかいろが赤く見えた お酒が美味しくなった 道端のウタが聴こえた Clap my Hands Clap my Hart S... 文月えん
温室 呼吸の無い会話 同じものを見てると思った 小枝に光る雫の一粒や 空に沈む星の爆発や 机の下に隠した写真 わたしが見てるものを知ってる? 遠く離れたともだちの嘘や 代わり映えのない部屋の鍵や さっき交わした約束の意味 きみが見てるものを教えて 風が凪いで運んだ雲? 土が呼んで芽吹いた花? 路地を接いで作った街? きみと見つめ合え... 文月えん
寝室 雨が降るから 月がきれいな夜に 愛を告げてくれてありがとう 次の日は切なさと嬉しさで熱が出ました それから少しだけ 泣きました そのあとココロが動かなくなる夢を見たので 金曜は切手を買いに行きました 土曜の夜に手紙を書くつもり 開き直るなら日曜日 やるせなさも悲しみも 光で溶かしてしまいたいから 別れを告げるのは 水曜にしようと... 文月えん
大広間 結び目 鳴りきれなかった弦が ロックンロールだと言うなら きみはきみであるべきだ わたしはわたしでいるべきだ 少しだけ きみのユウウツを借りるけど 返す時には 物足りない音色みたいな わたしの憂鬱を 混ぜ込んでもいい? ハッピーなダークネス ゆううつであるしあわせ ーendー ... 文月えん
居間 泣いたのさ 終わりが淋しかったんじゃない 悲しかったんじゃない 始まりが嬉しかったのとも違う とにかくきみが素敵だった ただきみがかっこよかった 終わりは気持ちいいわけじゃない 始まりは辛いわけじゃない その一本の線が見えたことも たいしたことじゃない ただきみがかっこよかっただけ ーendー ... 文月えん
撞球室 アナクロニズム ほんの少しうたた寝ただけ なんだけど 慌てて飛び起きた時計の針は 行き過ぎたと勘違いして 寝呆けたままで 後戻り 進んでいいのよ と 呼びかける太陽は無い 繰り返すメトロノームが エイトビートで笑い続けて やっと気付く 思い込みさ 遅れてなんかいない ーendー ... 文月えん