寝室 月下美人 花も恥じらう 乙女十七 煙くゆらせ 氷噛み ソファで呟く 「おしまいね」 華と振る舞い 乙女十八 今夜の寝床は二度目の男 ベッドで呟く 「おしまいね」 黒髪括る鏡台に 抱いた背中を盗みやり いつの間にかの常なれど 眉顰めても 朝は来る 華へ蝶へと 乙女二十二 騙し騙され 陽を眠り 揺れては香る 「あたしは夜に咲... 文月えん
応接間 99の素敵な帽子 きみならどうする? 地上3階のこの部屋には今は何も無いんだけれど ぼくは帽子屋さんをしようとは思わない 99の素敵な帽子 きみならどうする? その世界に何の意味も見つけられなくても ぼくには否定することが出来そうにないんだ 99の素敵な帽子 ぼくがかぶるには素敵すぎるけど きみがかぶるには悲しすぎる ーend... 文月えん
秘密の扉 告白 そうだな、結局は、寂しさを紛らわせたいってだけなんだけど きみに会いたいんだ きみに会えないからって 代わりを探そうとは思わない だから、一人きりだってかまわないって口走るけれど そんなのは強がりとは言わないんだ そうだよ、寂しさを紛らわせたいだけなのに きみに会いたくなるってのがどういうことか わかるでしょう... 文月えん
応接間 オトナ論 わたしはもうオトナだった 振り返って傍観 背中にタバコがしみて アイツが泣かない理由を知った 向き直って鑑賞 枯れたしっぽを握ったのは ウソの指輪をした右手だった わたしはもうオトナだった 駆け引きでも純粋でもない雨が 通り過ぎてしまうことが 声をあげて泣くよりもこわかった コマ送りのダブルベッドに 急ぎ足... 文月えん
応接間 宵待草 君はここに居ちゃいけないと あの時きみはうたってた ちゃんと声は届いたよ どんな言葉も聞こえたよ そしてわたしはここに居る 僕はそこへは行かないよと あの時のきみはうたってる 切ない声で届いたよ 冷めた言葉は聞かないよ だからわたしはここに居る わたしはとてもワガママ きみがなんと言ったって ここに居よう わたし... 文月えん
寝室 ヒトトシテ いつからか 「好き」と 言えるようになりました いつかより 自分を好きになったからです いつからか 「嫌い」と 言えなくなりました いつかより 他人が嫌いになったからです たくさんの弦を並べて 小枝で弾いては うたっていました 鳥でもないのに 疑いに目を光らせ くるぶしに爪を立てて うたっていました 猫でもない... 文月えん
応接間 Break time もしもこのまま今日が終わらなかったら あなたはわたしの隣にいてくれるのかしら もしもじっとしていて時間が止まるのなら わたしはきっとあなたの隣を離れないわ もしも時計を壊して身動きが取れなくなるのなら あなたの腕時計を一つ残らず壊してしまいたい でも わたしったら ひとり どこかに続いているオートウォークに乗... 文月えん
寝室 エラ呼吸 わたしの恋人ったら お部屋の隅の水槽で じっとしてるのが好きみたい わたしが眠ると 自転車に乗ったり 小石をかき集めたり ひとりあそびが好きみたい わたしが呼んだって ちっとも応えないけれど ひとりあそびに飽きたら 寂しい淋しいって呼ぶの わたしの恋人ったら 浮気が好きみたい わたしの恋人ったら 息してばかりなのよ ... 文月えん
居間 処女 私は常から思うのです。 母であろうと。 あなたに笑いかけ あなたに毒を盛り あなたを愛し続ける 母であろうと。 私はだから思うのです。 母でありたいと。 あなたを包み込み あなたを突き放し あなたを慈しむ 母でありたいと。 私は常から思うのです。 未だ血も見ず思うのです。 ーendー ... 文月えん