寝室 宵待ちの声 何もない夜 待ち焦がれても 待つことしかできない 呼んでみようか きみの名前を 何もない夜 こだまも返らない夜 雨が止むように 明日は来るのに 待つことすら もどかしい夜 ーendー ... 文月えん
大広間 ワイヤー 私たちはいつも 地面と空を結ぶワイヤーを 探すような会話をした それは無いのだ わかっていた だからこそ会話を続けた そうすれば やがて朝が訪れ 私たちはいつの間にか眠れるからだ 途切れそうになる時 私たちのどちらかが 例え話を始める 話題は久しく脱線し 花と雲の関連性を 探すことになる それは無いのだ わ... 文月えん
撞球室 朝の路地裏でゴミを漁るカラスのうた アイツがロックを吐き散らした後のステージには 極彩色のジェリービーンズ ほらほらおまえたち 早く拾っておいで 名前のない黒いブーツに踏み潰される前に! 昨日の青梅が咲き乱れる前のステージで 単細胞のサカサマブルース ほらほらあんたたち 早く摘んでおいで 繰り返すばかりのグラスが飛び散る前に! もうすぐ夜は春爛... 文月えん
撞球室 棒倒し 芸術的な嘘を吐いて 男はパスタを食べに行く 文学的な洗濯をして 女は真実を見つけ出す 数学的な痴話喧嘩も 夕方には真ん中で落ち着こう 男だって 女だって 理性的な衝動も 結局 真ん中で落ち着くのさ ーendー ... 文月えん
撞球室 阿呆 白いスーツが 自慢げにこっちを見た 汚れた靴を履いてるくせに 半径3センチの金色ピアスが 自信ありげにこっちを見た 茶髪は枝毛だらけのくせに Tシャツにジーンズで ピアスも指輪もしてなくて 髪も黒いままの 半笑いの私が 憐れみを持って見返して 傷ひとつない指先で 空気に「あほ」と書いた この阿呆が ーen... 文月えん